①高速道路の事故であおり運転が厳罰化した?
②高速道路であおり運転を受けたときの「対処法」を知る!
③高速道路上でのあおり運転の「罰則」は?
今回の記事では、高速道路でのあおり運転対策について解説します。
ご存知の通り、高速道路上でのあおり運転は一般道のあおり運転よりもはるかに危険です。
ドライバーであるあなたが判断を誤ると、死に直結する事案と言っても過言ではありません。
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高速道路の「あおり運転事故の事例」を知る!
過去の事例を知れば、「何に気をつければ同じような事故を起こさずに済むか」という事が理解できます。
2017年の東名高速では2名の死者が出る最悪のあおり運転事故が発生しています。
あおり運転の規制も、これら2件の事故が発端で厳罰化されているくらい重要な事故案件です。
厳罰化の背景
- 2017年、東名高速道でのあおり運転事故
- 2019年、常磐自動車道でのあおり運転事故
「東名高速道路」のあおり運転事故を教訓にする!
2017年、あおり運転が原因で大型トラックによる追突事故を引き起こした重大な事故です。
この事件の被害者は、4人家族のうち両親2人が死亡し子供2人がケガをするという悲惨な結果となりました。
史上最も悪質な高速でのあおり行為!
起訴状によると、石橋被告は昨年6月5日夜、東名下り線のパーキングエリアで、静岡市清水区の自営業萩山嘉久さん=当時(45)=に駐車方法を非難されたことに憤慨。
時速約100キロで萩山さん一家が乗った車を追い抜き、車線変更して進路をふさぐ運転を繰り返し、追い越し車線上に停車させて追突事故を誘発、萩山さんと妻友香さん=同(39)=を死亡させ、娘2人にけがをさせたとされる。
この事件の発端は、石橋和歩被告がパーキングエリアで駐車スペース意外に停車していたところ萩山嘉久さん(被害者)に『邪魔だ!ボケ!』と駐車位置を注意された事が始まりです。
懲役18年という厳罰がくだった!
5年前、神奈川県の東名高速道路であおり運転の末に家族4人を死傷させた罪に問われた被告のやり直しの裁判で、横浜地方裁判所は危険運転致死傷罪を適用できると判断し懲役18年を言い渡しました。
あおり運転により人身事故が発生した場合は、妨害運転罪よりさらに罪が重い「危険運転過失致死傷罪」が適用されます。
この東名高速の事例でも適用されており、懲役18年という非常に重い判決となりました。
石橋被告は2022年現在、無罪を訴え即日控訴しています。
「SAやPAでのトラブル」があおり運転の引き金に!
高速道では「SAやPAでのトラブル」があおり運転の発端となることはよくあります。
高速道路のSAやPAでは、車種ごとに駐車場所が決まっています。
また、短時間の駐停車であってもトラブルに発展しやすいです。
あおられる前にできること
- 高圧的にならない。
- 自分以外の同乗者の事を考える。
- 危険を感じたら車を発進させない。
常磐道のあおり運転事故の原因とは?
2019年8月10日に発生したあおり運転による事故の事例です。
あおり運転により男性会社員の車を止めさせた上、「今すぐ出てこい。殺してやる」などと怒鳴り、男性の顔を5回殴って1週間のけがを負わせた事件です。
常磐道上り線で立て続けに3か所であおり運転をしていたという犯人の狂暴性も問題視されました。
宮崎被告は昨年7~8月、浜松市の東名高速、愛知県岡崎市の新東名高速、常磐道の3カ所であおり運転をしたとして強要罪に問われた。
常磐道の事件では、停車させた車の会社員男性(25)の顔を殴り、約1週間の打撲を負わせたとして傷害の罪でも起訴された。
「仕返し」としてのあおり運転!
宮崎被告があおり運転を始めた”きっかけ”は、被害者に運転を妨害されたことへの「仕返し」でした。
それでは、どのような運転が他人を不快にさせるような運転だと思わせるのでしょうか?
検察側は
「運転を妨害されたと感じ、仕返しとしてあおり運転を行った身勝手な犯行で、被害者が厳罰を求めている。運転免許を再取得する可能性もあり、再犯が懸念される」
などと主張した。
あおり運転をした「きっかけ」はなに?
2016年~2017年のあおり運転をしてしまったきっかけの調査では、上記の5つが主な原因となっています。
主なあおり運転のきっかけ
- 進行の邪魔をされた:29%
- 割り込みされた、抜かされた:16%
- クラクションをならされた:8%
- 車間距離を詰められた:3%
- 口論:11%
参照:警察庁 矢武陽子著「日本におけるあおり運転の事例調査」
急な車線変更や追い越しがもっとも多い理由
あおり運転をするきっかけとなった、もっとも多い理由は「進行の邪魔をされた」というものでした。
これには、急な車線変更や強引な追い越しや合流が該当します。
次いで、割り込みや追い抜かしです。
急いでいるからといって、長い列を作っている車線に強引に割り込んでいませんか。
2つの高速道あおり運転事故の”ちがい”とは?
二つの高速道での事故ですが、悲いことに犠牲者がでてしまった事以外で大きな違いがありました。
それは「車にドライブレコーダーが搭載されていたか、いなかったのか」という違いです。
ドラレコが事件解決の決め手に!
常磐自動車道の事故では、ドラレコが事件の早期解決の決め手となりました。
ドラレコの映像から犯人特定、現場の状況もハッキリと記録されていました。
しかし、神奈川県の東名高速道路では、ドラレコがなく、当時近くを走行していた他のトラックや車両のドラレコ画像を集め検証が行われました。
ドラレコの搭載率は4割程だと言われていますが、いまやSNSなどで危険運転に関する投稿を見かけない日はありません。
常磐自動車道での事故 | 東名高速道での事故 |
---|---|
ドラレコ搭載 | ドラレコ非搭載 |
・犯人特定から判決までの期間が短い ・現場の状況がハッキリと記録されている | ・近くを走行していた他車両からドラレコ画像を集める必要あり ・被害者の当時10代のこどもが証言台に立つ |
高速道路での「あおり運転」を防ぐには?
自分ではそんなつもりはないのに、あおり運転を誘発してしまうような失礼な運転をしていませんか?
あおり運転を未然に防ぐための対処法を解説していきます。
車間距離は広めにとる!
車間距離の目安はタイヤの状態にもよりますが、走っている速度と同じくらいの距離を確保しましょう。
すなわち100キロで走行中は「100メートル」、80キロであれば「80メートル」が理想です。
高速道には「確認起点の看板」が点在しているので、50メートルや100メートルの間隔を自分で計測できます。
「サンキューハザード」を活用!
少しでも強引だったかもと思ったら「サンキューハザード」を出しましょう。
車線変更で合図なし(または合図が直前)のような運転をした際は、あおり運転を誘発する可能性があります。
ハザード本来の使用方法とは違いますが、あおり運転をされるよりはマシだと私は考えています。
PAやSAでのトラブルを避ける!
車に乗っていない時のトラブルも極力さけましょう。
乗車中以外でのトラブルが原因で2名の死者を出した「東名高速道の事故」の例があります。
PAやSAでは、マナーを守って休憩しましょう。
高速道の追い越し車線を走り続けない!
追い越し車線(右車線)を走り続けることが、あおり運転の引き起こすことも少なくありません。
そもそも、追い越し車線を走行し続けるのは「通行帯違反」にあたります。
通行帯違反 | 交通違反点数:1点 反則金:6000円~ |
追い越し車線を走っていて「自分よりも速い車が来たな」と思ったら、意地を張らずに車線変更をして車線を譲りましょう。
NEXCO 中日本(中日本高速道路株式会社)公式サイト【高速道路 マナーガイド】ページ。道路交通情報、渋滞予測や現在の渋…
高速道路であおられてしまったら?
どんなに気をつけていても、あなたが悪くなくても、高速道であおられてしまうかもしれません。
高速道であおられて、焦ってしまいどうしたらいいのかわからないというのは非常に危険です。
まずは落ち着いて一番左車線へ!
あおり運転してくる人の精神状態は、常人にはわかりません。
最悪を想定していつでも停まれる左車線に移動しましょう。
あおられた場合の心理状態の調査
あおり運転下の心理状態
「冷静に対処できると思う」「どちらかというと冷静に対処できると思う」の合計値:59.7%
「パニックになると思う」「どちらかというとパニックになると思う」の合計値:40.3%
あおり運転をされた際に「冷静に対処できると思う」と回答した割合は約6割でした。
しかし、逆に言うと4割の人があおり運転に対しての恐怖心が強くパニックになるかもしれないという不安を抱えています。
つまり、複数人でドライブをしていれば、そのうちの誰かが「冷静に対処できる可能性が高い」ということです。
なるべく早く警察に通報する!
高速道でのあおり運転は悪質で非常に危険です。
「通報するようなことでもない」と遠慮せず、なるべく早く警察に通報しましょう。
パーキングエリアやサービスエリアに入る!
あおり運転のターゲットにされてしまったと感じたら、最寄りのパーキングエリアやサービスエリアに入りましょう。
そのまま走行を続けるよりもパーキングエリアやサービスエリアに逃げ込むほうが安全です。
絶対にドアや窓を開けない!
ドアをロックして、物理的な接触を避けましょう。
相手が手を出さなくても、罵倒されたり車に傷をつけたら侮辱罪や器物損壊罪の対象となる可能性があります。
関連記事 暴行罪?器物損壊罪?あおり運転に関する法律知識は知っておいて損はなし!
高速で停車させられたら”ハザード”!
高速道で停車をせざるを得ない状況になったら、まずはハザードを点けましょう。
東名高速の事故時、停車させられた車にはハザードが点灯していませんでした。
ハザードにより、周囲の人が早い段階で通報してくれる可能性があります。
また、停車する際は一番左車線に停まりましょう。
停車させられた時の対処法
- 必ずハザードを出して停まる。
- 高速道での停車せざるをえない場合は、路肩(一番左車線)に停まる。
- 危険を感じたら、同乗者に頼み走行中に通報する。
高速道路上でのあおり運転の罰則は?
2020年の道路交通法の改正案で規定されている「あおり運転」には、以下のような行為が対象となっています。
主なあおり運転行為
- 通行妨害を目的として車間距離を詰める
- 前方に割り込み急ブレーキをかける
- 無理な割り込みや幅寄せをおこなう
- 高速道路上で停車する
現在上記のような妨害行為をした場合には、3年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金が科せられます。
また、この妨害行為によって衝突事故の発生や、
高速道路上で無理やり停車させたりした場合には、5年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金となります。
参考記事 あおり運転は一発で『免許取り消し』、3年以下の懲役または50万円以下の罰金!
あおり運転がなかなか減らない高速道
これだけあおり運転に関する罰則を厳しくしても「高速道路でのあおり運転」は減りません。
兵庫県では2021年10月12日に県内初の「あおり運転罪」が適用される事例が発生しました。
発表では、男は8月31日午後8時20分頃、同市東灘区の阪神高速神戸線の下り線で、乗用車を運転。
前方を走っていた同市内の会社員男性(49)の車の前に割り込み、急ブレーキをかけて停止させた疑い。
容疑を認めているという。
停車時、2台の間隔は約20センチしかなかった。
男は車を降りて男性に詰め寄ろうとしたが、男性は車を発進させて離れ、110番。
男性の車のドライブレコーダーに、割り込んで急ブレーキを2回かける男の車が映っていた。
まとめ:高速でのあおり運転は命にかかわる!
上図は警視庁が発表した「高速道路における供用延長100km当たり法令違反別(第1当事者)交通事故件数の推移」の中の”車間距離不保持”に関する推移のグラフです。
「あおり運転罪」で一番多い違反は、この”車間距離不保持”です。
グラフで分かる通り、この”車間距離不保持”の割合は年々低下しています。
あおり運転を減らすには、あおり運転についての罰則が厳罰化されていることの周知と一人一人の意識改革しかありません。
多くのあおり運転のニュースの特徴は、最終的に加害者が自分の非を認め後悔している点です。
一時の感情に身を任せず、運転免許保持者として責任ある運転をしましょう。
また、あおり運転に合う可能性は誰にでもあることを認識しましょう。
その上で、あおり運転の対処法を理解しパニックに陥らずに対処しましょう。